ぽれぽれうらうら::迷子の王様

2007-07-26 Thu

「ただいま」
「お帰り遅かったね。寄り道して遊んでた？」

塾から王子がなかなか戻らないのでさすがに気をもんでいた。
40分もなにしてたんだろう？

いっつもはハッピー笑顔で帰宅の王子なんだけど表情も大真面目。
ン？
なんかあったかな？
「寄り道してないよ。実はね･･･」
王子が話し始めた。
同じ塾のガンツ君とは塾を出て右と左にわかれる。
昨日はガンツ君が王子の方から帰ってくれたから、今日は王子の番だって思ったのだそうだ。
そして見事迷った。
「あのね。そしたらね。わからなくなっちゃって。あっちのぼっても違うしこっちもダメでね。結局児童館見つけて、そして戻ったの。遊んでないよ」
ありゃりゃ。
塾からの反対の道もさ･･･超簡単なんだけどねぇ。
君の方向音痴は天性のものだねぇ。
汗ぐっしょりで必死な王子が可愛い。
「そっか、王子迷ちゃったのね」
「そうなの」
「迷うのって怖いし心細いのにちゃんと帰れて偉かったね」
言った途端に王子がひ～～んって涙を零してすがりついてきた。
暑い。
でも可愛い。
がんばったり、嫌なこと、困ったことを辛抱していてママがそれをわかってくれた時にみせる「ひ～～ん泣き」が可愛い。
「1人ぼっちでお家に戻れなかったどうしようとか、このまま家まで帰れなかったら怖いとか、何処の道なんだろう？とか、暑い中、がんばって歩いたね。泣かないで、根性あるね。絶対帰るってがんばったから帰れたんだよ。児童館の方なんてすごい大廻しているんだよ。知ってるとこ出てきてよかったね。冒険だったね。カッコいいね。泣かないでがんばったね。すごいね。男だねぇ」
慰めっていうより、偉いなって褒めた。
顔を上げた王子が照れくさそうに笑った。
とても逞しくて、男の子っぽい良い顔になっていた。
「良い顔になったね。素敵だよ」
わたしも嬉しくなる。
「えへへ迷子になっちゃったんだ」
そうだね。暑かったね。
お水飲もうね。
アイス食べとこうね。
ニコニコお話し。

迷子の王様は迷子を極めて逞しくなりました。
うふふ。

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